皆川榮治のニュースレター 第38号(2004年6月24日)

技術移転の難しさ-コミュニケーションの難しさ

 「会議では、自分達(日本人)だけで、ことを決めてしまっていました」

 「朝のあいさつすら教えていませんでした」

 「台湾人幹部たちのレポートを充分理解できないまゝ指示をしていました」

 「毎日忙がしさの中で、台湾での仕事の使命を忘れていました」

 「日々の仕事をこなすことにばかり気をとられて、台湾人達に仕事をマスターさせることを怠っていました」

 「台湾に来て2年半になりますが、2年前にこの研修を受けていれば,もっとよい仕事ができたと思います」


  先日、台湾の某コンサルタント会社から Tel があり、 I T関係の某日系会社の日本人幹部12人を教育してほしい、と言って来ました。

 そのコンサルタント会社が過去2回台湾人幹部達を教育したのですが、日本人達も教育しないとベクトルが合わない、と言うのです。

 2-3回打ち合せた結果とりあえず、1日実施しましょうと言うことになって実行した結果、日本人幹部達の書いてくれたのが冒頭の感想文です。

 平均37-8才の若い管理者達ですが、優秀なエリート人材ばかりであることは直ぐに分かりました。いつものように「起立」「礼」「着席」というあいさつから始めましょう と求めたのですが、いささか抵抗を感じている様でしたが、次第に慣れ、夕刻、終講時には大変良い関係ができ上がり、冒頭の様な感想文を書いてくれたのです。

 伝統産業とちがって、この種 I T産業では技術移転が非常に難しく、忙しさにかまけて、ついつい分かっている日本人達だけて処理してしまう傾向があり、なかなか、台湾人幹部達への技術移転が進まないのです。

 講義の中で、私は言いました。

 「まず、私達が台湾へ派遣された使命を思い出して下さい。
  もちろん、会社がよい業績を挙げることが最大の使命ですが、台湾人達の力を発揮させ台湾人の力を通して業績を挙げることが必要であり、その為に役に立つ技術を彼らに移転することが、第一義的なミッションではありませんか?」  

 技術移転の内容は純然たる技術もあれば、営業の仕方もあり、サービスやメンテナンスの仕方もあり、管理の仕方もあります。多方面にわたる仕事の仕方を伝達し、教える為に派遣されているのです。しかし、実体はなかなかうまく行っていない会社が多いのです。

 この会社の場合、顧客から製品について不具合を言って来たケースについて、日本人幹部達は次の様に反省しています。

 「台湾人を含めて、関係者が集まり、対策会議を開きます。初めのうちは英語で説明し、討論していますが、そのうち、台湾人達が分からない部分について、中国語や台湾語でコミュニケーションし始め、日本人も英語がまどろこしくなって複雑な内容については日本語で説明し始めます。それも最初のうちは通訳させますが、通訳もおぼつかなくなると、台湾人達は一人抜け、二人抜け、最後は日本人だけが対策をまとめて終わるということが、しばしば」 だと言うのです。

 これでは難しい仕事は全て日本人がこなす、台湾人達は全くと言っていい程、技術的に進歩することが期待できません。

このまゝ、3-4年終わって、日本人達は帰日してしまうことになり、技術移転の使命は殆ど果たさずじまい、ということになります。

 技術移転がうまく行かないことを台湾人のレベルの低さに帰するのは、無責任と言うものです。技術移転するには移転の仕方について学び、熟達していなければなりません。

 経営トップから初め、技術移転への使命から移転方法に至るまで修熟していることが必要なのです。

 ところが、コミュニケーションの仕方すら習わないで台湾に来ている日本人が多いのです。

 この会社では今回日本人幹部から教育し始めなければならないと気づいたのです。台湾に来てまだ10年足らずの会社ですが、もちろん、今からでも遅くはありません。
 
 まずは理念やミッションの統一から始め、次いでコミュニケーションの方法を徹底しなければなりません。例えば----

 会議の正しいやり方を実行する
 個別検討会を定期実施する
 課と課の定期聯絡会を実施する

それに加えて、

 あいさつ等の基本動作を徹底する

と言うことになります。

 「会議ならうちでもいつも指導している」などとおっしゃらないで下さい。

 例えば、
    会議資料は前日配布。
    参加者は資料を読後、意見をもって参加。全員発言、全員質問。
    白板に討論内容を書き表わし、全員が白板を見ながら討議。
    議事録は会議終了時に配布。会議終了後は、議事録を活用して仕事を進める。
 
 この様な会議を実行する為には先ずは Top の強い意欲とたゆみなき訓練が必要です。経営会議から始め、会社幹部全員がそれなりの訓練を受け、練習を積み重ねて始めて出きて行くです。

 弊社は台湾人幹部の研修を33期にわたり続けて来ましたが、今回日本人幹部達を集めた幹部研修会第1期を5月から始め
ました。定員10人でやっています。意欲にあふれた若い幹部達で元気いっぱいです。まだ、2回実施しただけですが、成長を感じます。これからが楽しみです。(第2期は9月から始めます。どうぞご派遣下さい)

 また経営者の為には、台湾企業経営学のポイントを修得する為の BASIC MANAGEMENT SCHOOL を開催しています。台湾人幹部達といっしょに企業経営するノウハウを修得して下さい。(第14期は10月頃開講予定)

新原経営顧問(股)公司