皆川榮治のニュースレター 第34号(2004年2月16日)

320選挙の重大性

 320選挙の意義については、1月7日付けニュースレター第33号にてお話し申し上げましたが、今日はもう一つ突っ込んで日本或いは日本人がなぜグリーン系(本土派或いは台湾意識派)を支持しなければならないか?を説明致します。

 現段階でブルー系(統一派或いは「一つの中国」派)とグリーン系の支持率は拮抗していると見られます。

 2月14日(土)両総統候補によるテレビ討論が行われましたが、翌日の新聞4紙は「どちらの弁論がよかったか?」の民意調査の結果を、次の様に書いていました。

新聞 陳候補
(本土派)
連候補
(統一派)
ブルー系
(統一派)
聯合報 44% 30% 14%
中国時報 39% 32% 7%
グリーン系
(本土派)
台湾日報 38% 24% 14%
自由時報 調査なし

 同時に「どちらを総統に選ぶか?」に対しては、聯合報のみ掲載していましたが、陳35%、連41%と6ポイント差となっていました。

 総じて言うと、討論の内容については陳総統の方が優位に立ったと言えますが、それが支持率に影響したかと言うと、必ずしもそうは言えないようで、他に「この討論を聞いて投票を変更するか?」との問いに対し、「変更する」と答えたのはわずか4%だったことからもうかがえます。もっともこの数字はそのまま鵜呑みにするわけには行かないでしょう。更に、これらの調査が必ずしも正確だと言えませんが、テレビ討論前の諸調査を総合すると、現状ほぼ互角と言うべきでしょう。

 前回のニュースレターでも触れましたが、昨年末に陳総統が「中国東岸に496基配備したミサイルが台湾を狙っている」と暴露し、総統選挙と同時に「中国の武力不行使を求める」住民投票を行う旨、発表しました。
これに対し、中国は即時に反発すると同時に、アメリカ訪問した温家宝首相がブッシュ大統領と会い、「両岸関係の現状を変更する様な行動には反対する」との言質をとっています。

 またこれを受けて、日本の外務省は12月29日台北の交流協会内田所長に訓令し(それも1アジア課長の訓令)、台湾総統府に「徒らに両岸関係を変更しようとする行動には反対する」と明確に政治的意思を伝達したのです。

 1972年に日本と台湾が断交して以来、いくら台湾が求めても国と国との政治的交渉をいっさいして来なかった日本が、今回民間団体としての本来のカウンターパートである亜東関係協会を飛び越えて、総統府秘書長に政治的発言を伝達したことは、今までの日本政府の建前を破ったこととして驚かされることですが、それよりもっと大きな衝撃は台湾の内政に干渉する発言を行ったと言うことです。

 その上、アメリカの場合、ブッシュ大統領は「反対する」と言いながら、温家宝首相に対し、明確に中国にも「武力行使すべきではない」とクギを差していますが、日本の場合、恥ずかしいことに、中国に対しては何の意思表示もなし、と言うやり方で更に日本のこの行動に対し、中国から「よくやった」とのお褒めの言葉を頂戴した、と言う尾ヒレまでがついています。
問題はその結果、台湾ではブルー系が「国際的認知を受けられない公民投票」として元気を得、反対・ボイコットを主張するに至り、グリーン系への攻撃を一挙に高めたことです。

 日本の国益を考えるなら、台湾に親日の国家があることは大変好ましいことであるにも拘らず、日本外務省は中国の意向に沿う行動を取り、台湾が中国寄りになる方向に意思表示したと言う実態です。

 昨年9月、外務大臣の諮問機関(日本外交に対する有識者の評価を問うもの)の答申が出ましたが、そこでの外交パネルは台湾について「日本の近隣に親日国家があることは望ましい」と明示しています(本件については、後日紹介します)。が、今の外務省はそんなことは全く意に介さない中国寄り路線です。

 さて、これに対し1月16日陳総統は、投票実施項目として次の2つを発表し、内外の反発に多少配慮する姿勢を見せました。即ち――

  1. 中国が武力放棄しないなら、台湾の一層の自主防衛能力強化に賛成か?
  2. 両岸の政府間による平和安定交渉に賛成するか?
 それを受けて、一昨日(2月14日)のテレビ討論となったのですが、その結果は冒頭で述べた通りです。

 そこで、今後の動きですが、ニュースレター第33号でも述べた通り、2月28日(土)にグリーン系は基隆から屏東県枋寮までの487kmにわたって100万人の人間の鎖をつくり、「台湾意識の確立」を世界に訴えようと言うのですが、これによってまだ自分の意志を明確にしていない中間層或いは浮動票と言われるものが、一気に台湾意識を強めることへの必要感を強めることになるでしょう。

 と言うのは、戦後この方、国民党に抑圧されて来た台湾人民は、まだまだ政治的見解を人前で明確に言える人は少ない、と言う事情があります。はっきり言うと非難されかねない、と言う心配や恐れから自分の意志を表明しないと言う姿勢です。

 この選挙でブルー系が勝てば、明らかに民主化は後退し、国民党と親民党は一体化し、旧国民党への回帰が進むでしょう。

 また、連戦候補が表明する様に、国家主権問題は棚上げし「一つの中国」を認め、中国との交渉をただちに始めることになります。「台湾の香港化」への接近は避け難いものとなるでしょう。

 1895年以来、日本が心血を注いで来た台湾が、109年経って日本との距離を置く国家へとなって行く可能性が大です。

 従って、日本は今、グリーン系を支持して行かねばならないのです。

(次号へつづく)

新原経営顧問(股)公司