皆川榮治のニュースレター 第22号(2003年03月12日)

フセイン亡命の芽は消えたか?


 2月19日のニュースレターで、米英による(或いは国連による)イラク攻撃はフセインの亡命で無くなる可能性が高いと書きましたが、今やフセイン亡命の芽は消えつつあると思われます。
 その最右翼はロシアで、プーチン大統領はプリマコフ元首相を派遣して亡命を勧めていましたが、最近断念したものと見られます。イラク駐在のロシア人は、政府の指示により全て国外退去をすませたからです。ロシアはイラクへの武力攻撃を避けられないと、見たものと思われます。
 元来、今回の国連における米英と仏独露の対立は、イラクの10年来前の停戦合意遵守にかかわる問題に起因するもので、これを守らないイラクを国際社会が揃って守らせようとして来たにもかかわらず、守らないばかりか査察にも協力しない為、米英が武力による圧力をかけて守らせようとしたのに対し、仏独露は武力行使を反対し、政治力で守らせようと主張することによって、対立関係が生まれたものです。
 武力による圧力なしに10年間守らなかったイラクが、ここに来て米英の武力圧力でやっと査察に協力の動きを見せたからと言って、このまま武力圧力なしで柔順になるなどと言うことは考えられるはずもありません。
 しかし、仏が強行に反対しているのには理由があるわけで、1つはイラクの現政権とすでに石油採掘権を契約していることと、もう1つは米国による一極支配を阻止しようと言う政治判断からです。従って、仏は国連のもとでの合意を前提に、国際行動をすべきだとの論理を展開し、米国を封じ込めようとしています。
 しかし、米国はこれに対しこのままの対立構造の中で仮に仏露の拒否権発動で米英が敗れたら、米英の今までの主張をそのまま引き下げることになるわけもありません。国連決議がないのなら、それでは国家間の「宣戦布告」と言うことになって、攻撃開始とならざるを得ない、と言うのが常識でしょう。
 即ち、明らかに国連による国際秩序は崩れてしまいます。と言うよりむしろ、米英を中心とする新しい国際秩序の体制が形成されることになるにちがいありません。
 従って、日本もようやく米英の武力行使容認を決めましたが、次の国際秩序を見据えてのものと、考えるべきでしょう。この様な状態が現出するまでには、当然イラクへの米英による武力攻撃と言う一定期間を経過してからのことでしょうが、戦争が始まったならこの間イラクは今まで所持していないと言って来た大量破壊兵器を使う、と言う事態が発生するにちがいありません。おそらく生物、化学兵器で、多数の米英兵が死傷すると言う最も危険な事態も予測されます。
 この様な兵器を持っているからこそ、フセインが強気で政権を保ち、米英との対立を今正に継続していられるのでしょう。
 しかし戦争になったら、米英が比較的短期間に勝つことはまちがいありません。砂嵐の時期が到来して火器が殆ど使えなくなることは、すでに2月19日のニュースレターで書きましたが、米国のイラク攻撃はこの期間(砂嵐)、ペルシャ湾或いはトルコからのミサイル攻撃が中心になると言われます。このミサイル攻撃は砂嵐期間中も可能で、むしろITを高度に利用した命中率の高いものとなっていると言われ、従って米英の勝利はまちがいありません。但し、現存する「アームクワッド2」ミサイルで生物化学弾頭を、近隣の米英軍或いはイスラエル、クエートに向かって発射する事態が起こる可能性があります。
 いずれにしろ、この様な段階を経て国際新秩序に至る展開が濃厚で、それだけに今国連はアナン事務総長を始め、仏露も含め現状の国際体制維持を守るため、まだフセイン亡命の方策を探っていることも否定できません。しかし、2月28日のブリクス委員長の査察報告以後、仏独露の強い武力攻撃反対と国際世論の高まりがあいまって、むしろフセインが自信を強めている側面もあり、仏独露の思惑とはちがった展開になりつつあるのではないでしょうか?
 その様な視点からフセイン亡命の芽は今や消えつつあり、むしろ米英を中心とする国際新秩序への動きへと流れ始めたようです。
 日本の国益を考えると、国際新秩序の中で主要国になる立場を確立する戦略の組立てが必要となってきます。
 尚、今回独の立場を説明しませんでしたが、独は仏露とちがって、同じ武力行使反対でも社会民主主義政権の思想や3年連続の不況、失業率の高さ(約10%)等の国内事情によるところが大きいことだけを書き加えておきます。

新原経営顧問(股)公司