皆川榮治のニュースレター 第21号(2003年03月03日)

中国人民元切り上げを想定


 ご承知の通り、先月G7財務相・中央銀行総裁会議が行われ、2月22日に閉幕しました。
 この中で塩川財務相は、中国の最近の生産及び輸出の増加について触れ「中国が世界にデフレを輸出しており、先進国の対中国貿易赤字が急拡大している」と報告し、人民元が過去5年間米ドルに対し固定している(ペッグ)ことに疑問を投げかけました。(1$=8.277RMB)
 今や世界の工場と言われるまでに成長した中国の生産力が、日本、東南アジア近隣諸国に与える脅威を初めてG7の場で指摘したわけです。
 これに対し各国は「デフレの輸出」については合意しなかったものの、人民元が安すぎる点については共同の認識が得られたと伝えられています。
 かって米欧は'70年代に急成長した日本を、サミットなどに取り込み、米欧の枠組みの中に押さえ込んだ歴史があり、その結果円が360円から現在の120円に、何と3倍の引き上げをさせられたことは我々の経験して来た通りです。
 今の中国は「70年代の日本と同じ」との認識は、G7各国に共通したものとなったようで、いよいよ人民元切り上げ圧力への第一歩が動き始めたと見てよいのではないでしょうか?
 但し、米国は対外貿易赤字の最大相手国が'02年には日本から中国に取って替わったにも拘らず、人民元の切り上げには熱心でない現状があります。
 それはテロ防止で中国の支持を得なければならないことと、3億人の米国人口の半数以上が低所得者層で、彼らの生活を支えているのは中国からの低価格輸入消費財であるという事情があります。
 その上、米国はかっての日本と違って、中国には米国に勝てるだけの技術力、開発力がないことを知っており、更に元来貿易赤字が大きくても資本収支で黒字であればよいとの考え方を持っているだけに、対中国赤字拡大を恐れていない面があります。
 しかし、一方で昨年中国は70億ドルに上る米国債を売却しユーロ債に買い換えし、米ドルの一極支配に抵抗を示しています。5年前に当時の橋本総理が談話で「日本が米国債を売ったら、米経済も大きな打撃」と話しただけで怒りをあらわにした米国ですから、当然中国にも面白くないと思っています。従って、イラクや北朝鮮問題で一定の方向が見えて来た時点では、人民元切り上げカードで中国を押さえにかかる状況も出てくるに違いありません。
 日本政府にもこの1月に内閣府が人民元切り上げに関するレポートを出しており、中国政府にも「切り上げることが中国にとって有益」と提案しています。
 アジア問題で、従来イニシアティブを取れなかった日本が、最近の中国中心のアジア経済圏創設の動きに直面し、やっと牽制球や圧力をかける動きに出始めたと考えるべきです。
 今の情勢では、人民元切り上げが年内に行われるとは考えにくいところですが、2004年にはあると見てよいでしょう。それも15%位。従って、中国と直接交易している各企業では輸出には有利に、輸入にはCOST UPにつながる状況が出てくることを想定しておくべきです。
 また、COSTの安さを求めて中国にどんどん出て行っている台湾企業も、いよいよ曲がり角にさしかかると考えるべきです。

 本年春の講演会を4月に行いたいと存じます。政治・経済・経営の現状説明と、方向提案をさせて頂きます。
 4月9日(火)もしくは17日(木)に行おうと思いますが、皆様のご都合を把握した上で決めたいと思います。ご都合の悪い日をお教えいただけると、有難く存じます。

新原経営顧問(股)公司