皆川榮治のニュースレター 第15号(2002年10月31日)

日本から進出している企業の現状と課題

 台湾政府は、陳水扁総統の提唱で「知識経済時代」への転換を呼びかけている。即ち、政治・経済・文化のあらゆる活動において、仕事の転換をはかり、今迄よりももっと考えの深い仕事をしよう、と言うものである。

 たとえば、いわゆるお役所仕事で、不親切なやり方を顧客本位の親切な仕方に変えようと言うものである。
 台湾のお隣りには、大きな中国大陸があり、今や「世界の工場」と言われる程生産力を拡大している。
 中国企業の最大のメリットは言うまでもないが、コストメリットにあるが、台湾の多くの企業が低賃金を求めて中国にシフトしている。政府統計によると、1991年から2002年8月までの累計で、約25,000件、198億ドルの対中投資があり、企業数では推定13,000社の多くを数えている。

 従って、台湾の特に、伝統産業では空洞化の危険性が叫ばれており、台湾政府は、量や価格を追う製品は大陸に任せ、創意・品質・スピードを追う分野を台湾が担当するとの方向を打ち出した。
 仕事の仕方を知的レベルの高いやり方へと転換しようというものである。そうしなければ、台湾企業は中国に飲み込まれかねないのである。

 しかしながら、台湾企業はどちらかと言えば、そんな面倒な改革に取り組むより、大陸で安い賃金の工場を持った方が手っ取り早いと考える経営者が多いのも事実であり、上記の如く多くの企業が中国進出を果たしている。但し、政府の見方では、進出企業のうち、利益を挙げているのは3分の1に過ぎないと言っているが、実体は5分の1であろうと言われている。
 日本企業の大陸進出では更に低く、10分の1しか利益を上げていない、と言われている。原因は言語、人間関係(交渉力)の欠如、法律知識の欠如である。

 さて、このような状況の台湾で、日系企業は同じく知的レベルの高い即ち、「考える仕事」のやり方に転換することを迫られている。経営の質的転換を求められているのである。

 たとえば、製造現場において、従来は自分の作業範囲についてのみ、専念していればよかったものが、多能工化をはかり、作業者が何でも出来ることを求められている。また、営業現場でも売りっぱなしではなく、顧客へのフォローや緊密な連絡を求められるのである。絶えず顧客や関係者のことを考えることが必要になり、他部門や次工程、さらには上司や部下のことを考えた仕事が要求されるのである。これにより、中国にはできない高効率、好業績企業をつくり挙げようと言うのである。

 このような変化の時代にあって、日系企業は大きく分けて3つの方向に別れているといってよい。

 即ち、第1は積極的に改革を進めている企業、第2は進めているがうまく行かない企業、第3は改革に取り組んでいない企業である。

積極的に進めている企業は、日本の親会社が明確な革新の方向を示している場合が多く、従来の分業によるムダを排除して生産革新を進めている。マナーやコミュニケーション技術も伝え、教育投資を怠っていない。親会社がしっかりしている場合、多くは派遣された日本人経営者もしっかりした考えをもっているケースが多い。しかし、中には親会社が明確な革新方向を持っていなくても派遣された経営者がひとりがんばって台湾企業を革新しようと努力しているケースもある。ともに業種には関係なく、好成績を挙げている。

 第2のグループは2種類あって、第1のグループでありながら、努力をしてはいるが、進まないケースである。親会社も革新への確信が比較的弱く、台湾はもう仕方がないかな、と諦めかけている。派遣された経営者も難しいなと苦しんでいる。こう言う場合、ほとんどがコミュニケーション不足である。と言うより、コミュニケーションしているのに、出来ていないのである。
 計画性の不足であったり、台湾人の通訳がまちがっていたり、台湾人幹部にいいようにあしらわれていたり、このケースは非常に多い。

 第3のグループも、残念ながら大変多いと言わざるを得ない。日本の親会社の認識不足が最大の原因だが、派遣された経営者は可もなく不可もなく、大過なく過ごしているケースである。改革意欲もなく、教育投資もしない。

 さて、あなたはどの部類に属するか?考えてみて下さい。台湾へ出向派遣されてきた以上、企業改革に果敢に取組んでいただきたい。

(→11月8日、第12回"秋季特別講演会"で企業革新のやり方を詳述します)

新原経営顧問(股)公司