皆川榮治のニュースレター 第13号(2002年7月8日)

W杯サッカー日本チームの弱み

 今年の6月は日本中W杯サッカーの喧騒で明け暮れた。日本チームは4年前のフランス大会と比べ、予選リーグを1位で突破、大成功と言って良い。しかし、共同開催国である韓国は、BEST4まで勝ち進んだ。実力的、技術的、能力的には全て引けを取らないと見られているのに、この差はいったいどこから来ているのか?運がなかった、ツキがなかった、と言うことなのかも知れない。

 しかし私はそうは思わない。私の見た日本チームと韓国チームには歴然たる差があった。経営コンサルタントの目から見た、両チーム分析をまとめてみた。断っておくが、私はサッカーの専門家ではない。経営の観点から見た判断である。

 初めにチームの比較、と言っても選手23名+監督・コーチの30名余りを言うのではない。この30余名のバックにいるスタッフやフロント、サッカー協会全体を含めたチームを見ることが重要である。日本チームはトルシエ監督の指導のもと紆余曲折があったが、段々実力をつけて行った。昨年の10月頃には、韓国チームよりもはるかに強くなっていた。その頃、韓国チームはバラバラでワラをも掴む思いでオランダからヒディング監督を招いた。
 この時から韓国チームは団結色を強めて行った。一方、日本チームは技術力、戦術力がどんどん強くなった。

 ここでW杯開催中の両チームを思い出して欲しい。日本も勝った、韓国も勝った。しかし試合後の監督・コーチ、選手の喜びを表す情景は違った。トルシエ監督が抱き合って喜んでいるのは、周囲に居たコーチ陣と一部の選手のみであった。ヒディング監督は、コーチ、選手の誰かれとなく抱き合っていた。これが第1の差である。

 試合中のスタンドを思い出してほしい。日本チームサポーターの中に、選手の名前を書いたプラカードは沢山あったが、私は「トルシエ監督」の名前を見たことがなかった。しかし、韓国スタンドには「ヒディング監督」のプラカードもあったし、「ありがとう」の文字もあった。これが第2の差である。

 ここまで見てくると、監督の統率力の問題か人気の多少の問題と見えるかもしれない。しかし私が言いたいのは、日本チームには監督と選手に強い一体感が生れなかった原因が他にあった、と言うことである。
 即ち、日本チームを支えるフロント、スタッフ、協会運営の中に「日本代表監督はトルシエさん」と決めた後にも、ずっと批判を続ける役員達がいたと言うことである。その影響は選手達にも及び、トルシエ監督を自分達の上司として尊重するかたちが最後まで完成しなかったのである。

 決勝リーグの1回戦後、W杯が終った日本チームの23名のインタビューが新聞に載った。その中で4人の選手が監督のことに触れていた。が、「トルシエ監督」と言っていたのは只の1人、あとの3人は「トルシエ」と呼び捨てていた。日本人には目上の人や他人の事を「さん」付けで呼ぶ美しい習慣があるのに、である。
 W杯が始まる前にも選手インタビューで度々同じ光景が見られた。マスコミも監督と選手の軋轢をあげつらった。

 韓国チームはどうであろう?
 去年の10月にヒディング監督を迎え、危機意識の中にあった韓国サッカー協会は、鄭会長のもとヒディング氏全面支援体制を作った。

 ヒディング氏は今まで全く韓国チームがやらなかった体力増強法を、オランダから専門家を呼んで徹底した。今プロスポーツ界では体力増強法が盛んである。科学的な体力増強法なしには強くなれない、というのが世界のプロスポーツの流れである。清原選手が復活したのもこれだし、田口選手が強くなれないのも体力強化の不足を指摘されている(体の大きさの問題ではない)。

 かくして韓国チームの経営は勝つために一致団結を見たのである。
 それが、決勝リーグ1回戦のイタリア戦での死に物狂いの逆転に繋がったのである。比べて日本はトルコにずるずると負けてしまった。川口選手が言っていた「日本の選手には勝つことの執念が欠けていた」と。韓国は、執念が一丸となって燃えていたと言える。

 これはどこから来たものか?
 解説の必要もないと思うが、経営力の差である。岡野会長をヘッドとする経営と、鄭会長をヘッドとする経営の差である。
 日本チームには経営陣の統一がなくスキ間があった。批判分子が絶えず存在し、監督・選手の中にまで、最後まで完全な団結を作れなかった。韓国はそれが出来たのである。

 鄭会長と言う人はなかなかの経営者である。日本単独開催を覆して、共同開催に持って行った人物であり、名称までKOREA/JAPANを通してしまった人間である。大統領候補にまで噂が出ている。
 経営の一体感、統一体を作ること、これがトップの仕事である。

 最後に、経営を離れてトルシエ監督について触れたいことがある。日本チームの経営に一体感の充分でない中で、日本チームをここまでよくぞ導いて下さった。その上、日本が好きになって日本チームを今後も見たいとも考えている、と言う。経営陣のミスで韓国チームと大きな差を招いたことを自覚していない経営陣がいる以上、トルシエ監督の再任はないと思う。

 しかし、日本人はこぞって声を揃え「トルシエさんありがとう」と言うべきである、と私は思っている。

新原経営顧問(股)公司