皆川榮治のニュースレター 第11号(2002年5月7日)

考える仕事

 4月15日(月)の弊社講演会で私は知識経済時代の企業経営のやり方についていくつかのポイントを話した。

 その中心テーマは「考える仕事」である。
 即ち、知識経済時代の企業経営においては、経営者も、従業員も「考える仕事」をしなければならない、と言うことである。
 台湾政府は先に「国家建設6ヶ年計画」を発表して、「これからの世界は知力中心の競争」の時代であり、価格や量ではなく、品質、創意、スピードの時代であると言っている。
 そこで今日は2つのことを申し上げたい。
第1は経営者の革新であり、第2は「考える従業員の集団」をつくることである。

 初めに経営者の革新であるが、1つは強いリーダーシップの確立とトップダウン経営であり、2つ目は戦略構想の転換である。これらについては本ホームページの「講演会」テキストを参照されたい。レジメを掲載しているので、その8~11ページご覧いただき度い。
 ただ1つだけ重ねて強調しておき度いことは、現有の設備、製品、材料、ネットワーク、人材、資金、顧客等、現有のものにとらわれない戦略構想への転換を考えていただき度い、ということである。日本の本社の方針があるからそうは行かない、と言われるふしもあるが、日本の本社の方針を変えられる位の経営戦略構想を持つべきである。

 さて、第2の「考える従業員集団」をつくることについてだが、これはすこし時間がかかるが、それ故にこそ早く始めなければならない。
 欧米系企業は台湾人との関わりにおいて、人種も、ことばもちがうのだから所詮分り合えるはずがない、として、合理的・システム的に対応する。
 しかし、日本人はどちらかと言うと台湾人の習慣や考え方を理解し、コミュニケーションを深めながらレベルアップをはかろうとする。
 戦前の殖民地政策が最も典型的である。日本の殖民地政策は台湾でも朝鮮でも同化をはかり、国内と同じ対処をした。が、欧米列強は同化どころか大部分が利益収奪拠点としただけである。
 これを見ても同化をはかる方が結果としてよい実りを持たらすことはまちがいない。
 但し戦後、それにも拘らず、韓国の反日思想が強いのは、韓国の戦後の為政者のしわざによるものであって、戦前の統治方式によるものではない。これは
韓国の年配者の声を聞けばすぐに分ることである。

 さて、台湾企業で幹部・従業員達のレベルを挙げる為にはどうすればよいか?
 1つの例を見て頂き度い。
ある工場の製造ラインで、不良率が高くなった。課長が係長に「原因は何だろう?」と聞いた。係長は即座に答えた。「部品です。」「どうしてか?」と聞くと、「部品のロットが昨日から変りました。」と言う。
その結果、その部品を供給する協力メーカーに調査・改善する様指示が出され、供給メーカーは対応にバタバタさせられることになった。
 しかし本当は、部品が原因ではなく、風邪を引いた作業者の作業ミス多発によるものであった。
 考えや調査、分析が足りない為に供給メーカーに迷惑をかける結果となったのである。
 この様なケースはどこにでも発生しているが、指導する日本人が問題発生に気づかないことすらあり、表面に出るものは少ない。台湾人の中だけですったもんだして時が流れて行くことが多い。つまり、いつまで経っても同じ様なあやまちが繰り返されているのである。これではコスト優位にある中国の品質レベルが台湾並みになって来たら、直ちに台湾工場は存在価値を失うことになる。
 そこで台湾工場は、「考える工場」に変身する必要が出て来る。
 先程の例で言うと。考えられる要因を全て考えさせること(教えるのではない)。
 それを一つ一つデータ的にチェックして、問題の有無をつぶし、真の原因を把握させることである。
 こんな手法を事例ごとに体験させるのである。これによって、従業員達は自分で考える様になる。かつては、我々日本人もこれをやって来たのである(30~40年前)。
 問題解決手法の方法として、この時代にはシックスシグマがよい。これを教えて経験させることである。
 極めて常識的なことであるが、指導する側の問題発見力と指導へのねばりにかかっている。

 「考える従業員の集団」をつくることが台湾企業の生きる道である。考えることによって、QCDの顧客ニーズに答えられる工場ができ上がるのである。

 (5/13(月)の弊社「生産革新研究会」では「考える仕事」がテーマである。乞うご期待)

新原経営顧問(股)公司