皆川榮治のニュースレター 第7号(2002年2月12日)

最近の円安について

 昨年11月末以来、円安が続いている。110円前後から今や133円前後に張り付いている。実に18%の低下である(ドルベース)。不況が続いていることによって、経済実体への評価が下がったわけではない。これはすでに折込済みであり、不況下でも日本の貿易は黒字が増え続けているのだから、基調は円が強いはずである。
 また、中国が言うように「日本政府は円安対策を何も打たない」から、これが続いているわけでもない。

 歴然とした理由がある。
 今、日本の長期信用系の銀行は融資先がなく、お金がダブついている。そこで、最も安定した融資先として米国債の購入に走っている。
 この米国債購入は、既に昨年10月の日銀金融政策決定会議で、「円安導入で物価安定をはかる方策」として提案された(中原委員)が否決されている('01年12月日経ビジネス)。しかし、その後日本の大手銀行は長期信用系を中心に米国債購入に動き出し、今も続いている。この傾向は当分続くと見てよい。即ち、円安傾向はしばらく続くと見るべきである。
 その理由は2つある。第1は、米国債は銀行自体の投資先として安定しており、他の大口がない為、継続するということ。第2は、誰も公には言わないが、円安が続くことによって輸入価格引き上げ→国内物価引き上げにつながり、デフレ対策になる、と言うこと。

 2月10日G7財務相・中央銀行総裁会議が行われた。ここでも円安が容認された。「先行き世界経済について下振れリスクは残るが、G7経済は再び拡大に向かう見通し」と発表した。その中で「為替市場には引き続き注視し、適切に協力する」としている。G7が日本のデフレ対策を容認したという意味である。
 更に2月17日ブッシュ大統領が訪日する。'98年のクリントン大統領の頭越し訪中とちがって、対日重視を強調することになっている。また、日本経済の潜在的強さを指摘した上で、再生の支援をする旨発表することになっている。円安容認もこの背景に存在しているのである。

 '97年の東南アジア金融危機の主たる原因は、東南アジア諸国の経済構造の弱さもさることながら、急激な円安にあった(100円→140円)と言われている。
 では、今回の円安で東南アジアは再び金融危機に?という危惧が浮かぶが、すでに日本の輸出品の80%は生産財となっている。消費財(自動車も含む)は20%に過ぎない。更に消費財の競争相手はむしろ中国である。
 今回の円安で直接被害があるとすれば、中国である。WTO加盟第1年目の中国にとっては、この円安の影響は少なくない。長期に続くなら必ず日本に対し、円安対策を一層強く求めてくるにちがいない。

 中国の本年の経済成長率は7%と発表しているが、WTO加盟による輸入品の増加、更に今回の円安と良い材料はない。今年の成長率は目標を下回ることが予想される。
 昨年12月の弊社講演会で私は「中国経済は近いうちにバブルがはじける」と話したが、その可能性は益々大きくなっている(本件は稿を改めてレポートする)。

 何はともあれ、円安はしばらく続くと見るべきである。日本からの輸入が低コストとなる。日本からの輸入品が増加するとの判断で経営を組み立てるべきである。

新原経営顧問(股)公司