皆川榮治のニュースレター 第1号(2001年12月20日)

台湾企業経営のポイント

台湾へ来て初めて企業経営をされる日本人は、経営について余り学んだこともなく派遣されるケースが多い。経営とは何か?どのように経営すれば企業は良くなるのか?台湾人と一緒に経営するにはどうすればいいのか?等々知っておかねばならないことが数多くあります。

以下、そのポイントを記します。

1.経営とは何か?

経営とは「TOP の意志を明確にし、従業員(幹部)のコンセンサスを得て、これを達成し実現する活動」です。従って、日本でも台湾でも、どこにおいても次の三つの要素が不可欠です。

(1)TOP が方針や考え方を明確にすること。
(2)幹部・従業員に、TOP の方針や考え方を徹底して、コンセンサスを作ること。
(3)TOP の方針や目標を達成し、実現すること。

まず、経営者はこの定義をしっかり頭の中に理解して頂き度いと思います。

では次に台湾企業の特徴を整理します。

2.台湾企業の特徴

(1)台湾企業の長所

①決断が早い
②独立心が強く、お金をもっている
③機を見るに敏
④人間関係を尊重し、人脈活用がうまい
⑤仕事が早く、模倣も早い

台湾の多くの経営者は独立心が強く、個性も強く明確である。従って、台湾は中小企業が多く、その点では、日本とよく似ており、あらゆる産業で部品業が発達し、産業の広い基礎分野を形成している。
また、機を見るに敏で決断が早いのは日本人が学ばねばならない点であり、投資も引き上げも、決定が早い。一方、人間関係を大切にし、特に外国人を大切にしてくれるので、日本人にとっては仕事のやり易い面がある。

(2)短所

①組織力が弱い
②緻密さに欠け、基礎開発力が弱い
③計画性・企画力が弱い
④幹部の忠誠心が弱い
⑤幹部の部下指導が弱い

台湾人は一般的に、独立心、自立心が強く、経営者になることを願望する人が多い。
仕事が早い反面、緻密さに欠け細かい仕事、もつれた糸を解きほぐす様な仕事は好まない。その為か精密さを求められる技術開発は弱い面がある。現実に見えない将来のことを計画するのも簡単になら出来るが、緻密にやるのは意味がないと考える。
自立心が強い反面、忠誠心に欠け、幹部が部下を指導するのも、面倒がることが多い。

3.台湾企業経営のポイント10項目

以上の様な台湾企業で、上述の「経営の定義」で書いた3項目を実行するには、それなりのポイントがある。日本でも通用するポイントもあれば、台湾ならではのポイントもある。以下に10項目を紹介します。

(1)方針を明確にする
企業経営において経営理念の持つ役割を軽視する人は多い。しかし、これは誤りである。
経営理念のない企業は行き先や方向の決まっていない船、或いは、方針の決まっていない教育の様なもので、中にいる構成員は求心力や貢献心が持てなくなります。
企業に於いては従業員の行動の原点を示すものが経営理念で、どうしてもなくてはならないものです。
経営理念が行動の重点なら、経営方針は行動の方向を示すものです。当期の行動の方向づけを明確に打出すことが大切で、幹部・従業員はこれを見て、企業の重点を知ることが出来ます。

(2)約束ごとをはっきりする
企業の最終目的は、利益を挙げることですから、これを達成するために、どうしたらいいのか、具体的方法を決めなければなりません。
企業にはいろんな部門がありますので、部門ごとに具体的方法が決まります。
また、これらの方法を誰が、何を、どこまで、やるのか毎月毎月取り極めてはお互いに約束することが必要です。
企業は経営者や幹部がお互いに約束ごとを決め、それを約束通りに実行していくことによって業績が挙がっていくものです。この様な企業は方針の徹底力が強く、組織力の強い会社だと言えます。

(3)台湾人の習慣や言葉を学ぶ
台湾で仕事をする限り、台湾の言語を学ぶのは必要条件です。上達の度合いはともかく、継続して学習しなければなりません。流暢に話せなくても、学んでいることによって、台湾人の考え方も分かり、文化も見えて来る部分があります。また台湾人達はその努力を認めるでしょう。
また台湾人の習慣は出来るだけ早く学ぶべきでしょう。もちろん1 年や2 年で簡単に全て台湾人と同じように習慣が分かると言う訳には行きません。が知っておかなければ、誤解を生じる素と言えましょう。

(4)幹部に幹部としての価値判断を求める
会社で仕事をする目的はいくつかあります。主なものは三つです。

①生活の安定
②自己実現(自己の成長)
③会社(引いては社会)への貢献

「生活の安定」は万人誰しもが持っている目的です。
しかし、企業ではこれだけを目的として、仕事をする人ばかりでは困ります。
自己実現や社会貢献を目的とする人が多ければ多いほど、方針の徹底力は増加し、強い体質の会社になります。
ですから経営者は幹部に対し、自己実現や会社への貢献を目的として仕事をする、即ち方針の徹底を価値判断の中心に置くように要求することです。
つまり、幹部に対し「会社への貢献」を価値判断の第一、とするよう要求することです。

(5)リーダーシップの強い台湾人幹部を育てる
日系会社と言えども、いつまでも日本の技術、資本、人材に全てを委ねているわけには行きません。また台湾人従業員に彼らの能力をフルに発揮させるには、台湾人幹部にリーダーシップを発揮させることが最も有効です。
従って、リーダーシップの強い台湾人幹部を育てることが、台湾企業経営の最重要課題です。

リーダーシップの強い人の条件は次の通りです。

①会社貢献への価値判断が明確である
②根性があり、ねばり強い
③論理的な思考と説得が出来る

複数の幹部と絶え間ない面談を繰り返すことによって、これらの条件を備えた幹部を、台湾人のリーダーとして選んでいくと良いでしょう。

(6)コミュニケーションは3倍努力する
経営者は直属部下との間に1対1のコミュニケーション機会を持つことが大切です。
多くの経営者は会議形式或いは、随時必要に応じ報告を受けるかたちで幹部とのコミュニケーションを行っています。もちろん会議も重要だし、報告も受けなければならないことは言うまでもありません。
しかし、もっと大切なのは経営者が直属の部下(例えば総経理と副総経理や協理)との間で、個別に面談を行うことです。
それも、定期的にかつ継続して行い、業務課題の進行状況を確認し、次の行動を相互に約束するのです。これを繰り返すことによって、経営陣のコミュニケーションは格段によくなります。
言葉が互いに流暢でないなら、特に時間をかけて個別面談を行うべきでしょう。日本国内で幹部とのコミュニケーションにかけるよりも3倍以上の時間をかける必要があるということです。

(7)優越感を持ってはならない
日本人だから台湾人より優れているなどと言う人はすくないでしょう。が、内心、潜在意識的にそう思っている人は結構いる様に見えます。
特に台湾人は日本人を尊重してくれるし、多くの日本人は日系会社で幹部以上の地位に着いています。従って、つい優越感がおもてに出ることがあります。
人間として平等であり、対等であることを、心して言い聞かせることが必要です。
かつて、中国人蔑視の言葉を吐いて、今だに入国許可を貰えない日本人を知っていますが、不幸なことです。
人は人を尊重しなければ、良い仕事は出来ません。地位にもとづく権力の発揮と人への尊重とは、同時平行して実践しなければならないものでしょう。

(8)決断力を身につける
日本人経営者は集団で合議して決定する傾向が強い。
稟議書の上で関連部門の意見が夫々開陳され、責任分散されたかたちで、決断をする習慣が身についている場合が多い。
しかし、今の時代はこの様な決断をしていては時機を逸することになりかねません。早い決断が求められています。
特に台湾企業は決断が早いので、それを上廻る決断力を養う必要があります。
決断力を身につけるには、次の4項目が重要です。

①決断しないで迷っていると、多くの関係者や部下が困っている、と知ること
②決断が遅いと部下達がTOP を信頼出来なくなっていると知っておくこと
③30%の情報でも決断する必要があることを知ること
④決断を誤ったと知ったら、迷わず改めること

(9)仕事と収入の連動をはかる
台湾企業の多くは従来、年功型賃金制度を持っていました。が、近年、職能資格制度の導入が盛んになって来ています。
即ち、よく仕事をした人に多く給料を上げ、余りしない人には給料は少なく、と言う制度への転換です。
それには、次の様なステップがあります。

①資格制度をつくる
 (資格と職位の対応関係を明確にする)
②生活給と職能給の構成比率を決める
③職能要件書をつくる
 (部門別資格等級別に仕事の要件を書き現わす)
④生活給表(年齢給と年資給)をつくる
⑤職能給表をつくる
⑥手当ての廃止と見直し
⑦旧制度から新給与制度への格付け
⑧人事評価表をつくる
⑨人事評価マニュアルをつくる
⑩給与規定の作成
⑪人事評価と面接の幹部訓練を行う

(10)夜遊びはほどほどに
原則として単身赴任はしない方が良い。やむなく単身赴任となったとき、健康と女性交友には充分気をつけることです。
単身生活では、ときとして寂しくなることがあり、スナックのカウンターに座ることもあるでしょう。
その後が問題で、親しくなって、挙げ句の果てはお金をせがまれ、帰国時には家庭も勤務も壊れ、会社の名誉も傷がつく、と言った例が数多くあります。
従って、大原則........単身赴任禁止
やむなく単身赴任の場合、夜の遊びはお金をきちんと支払って、決済すること。
貸し借りも投資もしないこと。
以上10項目が台湾企業経営のポイント、言い換えれば「台湾企業経営の秘訣」です。

この他に、秘訣ではありませんが、もう一つ付け加えると、身近かに経営について相談できる人を持つことです。
経験上から言えば、台湾へ派遣され、経営者としてお仕事を担当される方のうち、半数以上(敢えて%は言いませんが)の人達は、大過なく任期を終えて帰日されます。つまりこちらで特に、これと言った改革もチャレンジもされずに帰られます。これからは益々経営環境は厳しくなります。台湾に派遣されたからには、台湾にも日本にも貢献できる経営者となって、帰任の日を迎えようではありませんか。
(著作権は皆川榮治帰属)

新原経営顧問(股)公司